2025.05.23
PICK UP
06
#加美町
職人がつくる『加美クラフト』を求め、
中新田商店街をめぐる②

宮城県の県北にある加美町・中新田商店街のものづくりと職人文化をめぐる「加美クラフトトライアングルプラスワン」をRe:Scoverする記事の後編です(前編はこちら→職人がつくる『加美クラフト』を求め、中新田商店街をめぐる①)。
後編では、根強い人気を誇る酒造りの職人と、町唯一の刃物職人をご紹介いたします。
伝統の工法で人々を酔わせ続ける中勇酒造店
中新田商店街の大きな特徴の一つは、1キロ圏内に3軒もの酒蔵があることです。それだけでも加美町は職人文化が息づく町であることがわかります。今回は中勇酒造店の中島崇文さんにお話を伺いました。
代表酒「天上夢幻」をはじめとするお酒は、伝統的な製法「直火和釜蒸し」で作られているそうです。

「手間やメンテナンスは大変ですが、この製法でしか生み出せない味があります」と中島さんは話します。
近年、国内外からの関心が高まっている日本酒。酒造を訪れた方へ向けて見学会も開催しており、大迫力の蔵を間近で見ることができます。
「昔から、このあたりはものづくりの店が多いなと思っていました。それぞれにファンが訪れているのをよく見かけるので、とても面白い町だと思います」と中島さん。

『中新田打刃物』唯一の職人・石川刃物製作所
お会いした職人さんたちが口を揃えて「加美町の職人といえば」と名前を挙げていたのが、石川刃物製作所の石川美智雄さんです。加美町は、宮城県の伝統工芸品にも指定されている『中新田打刃物』で栄えた町でしたが、今や職人は石川さんただ一人だけ。

研ぎ続ければ10年以上も使えるという片刃包丁の切れ味は、さまざまな料理人を唸らせています。この技術をぜひ次世代に繋いでいただきたい…と話を伺ったところ、教えていただいたのはシビアな現実でした。
刃物の技術を身につけるには、最低でも5年は修行が必要です。とにかく数を作って感覚を体に覚え込ませるのが職人への一番の近道です。しかし、物価高や刃物の受注減により、技術を受け継ぎたいという人がいても修行もままならない状況が続いています。
「正直、厳しいです。けれど、品質は絶対に落とさない。それが私たちのプライドです。最近はオンラインショップも始めたので、まずは、たくさんの方々に中新田打刃物を知ってもらいたいですね」
優れた技術や確かな伝統を次世代に受け継いでいくためには、周りの応援が絶対に必要です。そんな当たり前で大切なことを再発見させてくれた、加美町での旅でした。
